明け方、パセリが寝心地の良い場所を探して車内をうろうろしていた。
普段の居場所は、わたしたちの頭の上か、足元。たまたま足を折ったりしたときパセリが「良い場所見っけ!」と思ってそこで丸まったら、もう私たちは足を伸ばせない。
そして、もしも居心地良い場所が見つからなかったら、訴えるように私たちの足の上やお腹の上に覆いかぶさる。
朝はきっと少し寒かったのだろう。わたしも畳んであるフリースのブランケットを広げようかと思ったくらいだった。面倒で止めたけれど…。
6時に起きだした。温度は寝る前と変わらず4度。
着替えて窓のカーテンを開けると、雪を被った山の姿が現れた。昨日到着したときは真っ暗で気付かなかった。
雪山を背景に、関東ではとっくに緑の葉を繁らせている桜が花を咲かせていた。
SAから一般道へ出て、パセ&ポプと散歩をする。
道の脇の林には分厚い布団のようにあちこちな雪が残っているけれど、ノカンゾウ、こごみ、フキノトウ、二輪草もあちこちで春の到来を喜んでいるようだ。
同じようにSAから散歩に出てきたらしい犬連れの男性と挨拶を交わす。
「寒いですねぇ」
夫がこごみを少しばかり採ってきて、ジェットボイルでゆでた。ポン酢をかけて朝食の足しにする。
採れたてをしゃきしゃき食べた。少し筋張ったようなこごみの独特の食感が心地いい。
今年は自分たちで採って食べられないかな、と思っていたから感激もひとしおだった。
最近は車中泊のガイド本なども出ているからだろうか、車中泊している人が多くなっている。女子トイレには5つ手洗台があったのだけれど、その3つでは、まるでホテルのバスルームかと思うほどに、洗顔・化粧セットを広げている人たちがいた。手を洗う方が申し訳ないと思ってしまうほどに占領している。
7時45分に妙高PAを出発した。
この時期の吹流しはいつも鯉のぼり。今日は、そのまま空高く自由に飛んで行ってしまうのではないかと思えるほど、元気に泳いでいる。
戸隠か白馬か、名前はわからないけれど、まだまだ勇壮な冬山の姿が連なっている。
あの雪の中を今も歩いている人たちがいる、と点にも見えない人たちの姿を思い描く。
ガソリン補給をしたとき、窓を拭いてもらったのはやはり間違いだった。拭きなおしが必要になることが多い。このときも次のPAに入って拭きなおすことになってしまった。
自然が多く残る場所でも、人工物は容赦ない。
土足で踏み荒らしているかのように感じてしまう。
そんな人工物の上を高速で通過していくわたしが何を言えるのか、と思うけれど。
糸魚川を渡るころになると、猛烈な風が吹き、まるで地震が起きたかのように車が左右に振られはじめた。そして、その風には小雨までがぱらぱらと混じり始めた。
高速道で移動すると、天気も景色も高速で変化していく。
びゅんびゅん飛んでいく景色の中に、突然飛び込んできた鮮やかな赤、黄色。
砺波はさすがチューリップの町といわれるだけある。高速道からでも赤や黄色のチューリップが帯のように広がっている様子がはっきりと見え、目を奪われた。
車内では、砺波のチューリップのようなカラーリングのバイヤブランケットを敷いて、パセ&ポプが寝ている。
9時を過ぎたからか、通過するPAやSAには駐車場に誘導の人たちが立っている。さすがGWだ。まだわたしたちはその実感はないけれど…。
10時には金沢を通過し、11時には九頭竜川を渡る。
山々にはまだ出たばかりの小さな若葉がきらきらと輝いている。
11時半、敦賀で高速を降りた。これより先、日本海側沿いに高速は走っていない。
21号線はもう何度か通っている懐かしさを覚える道。
日本海さかな街に入ってみた。
たくさんの店舗が入った建物の中をぐるっと見て周る。観光客相手といった店ばかり。(わたしたちも観光客と言われれば観光客なのだけど。) なにも買わず出るばかりになったとき、出口付近にあった出店のような焼きさば寿司のおじさんと目が合った。試食を勧められ一口いただく。生姜が利いて美味しかった。明日の晩まで常温で大丈夫、というので購入する。普通のお寿司でおいしいところないかな? 夫が聞いてみた。
小声で「こん中はどこもダメ。言っちゃ悪いけど…。前にある回転寿司の方がよっぽど美味しいよ」と教えてくれた。
やっぱり!
この中で買うのは躊躇われたのは間違っていなかったようだ。
混雑している道を渡って、向かいにある回転寿司店にいってみることにした。駐車場はほぼ満車。店内に入ってみると待っている人たちもずらっと並んでいる。焼きさば寿司のおじさんが「よっぽど」というのだから、「まあまあ」ということでもあるだろう、と想像している。
混み具合で美味しさが計れないことは、身をもって知っているつもり。
しかし、ここは安さ故に混んでいるという類の店ではなさそうだった。持ち帰り用のお寿司は、数種類の中から選ぶしかない。少し残念だったが、1.5人前というものを選択。お会計は夫に任せ、わたしはパセ&ポプと寿司店のまわりを散歩する。
夫が抱えて持ってきた寿司は、不必要と思えるパッケージと無駄に小奇麗な包みでくるまれていた。
そんなものにお金をかけるなら、保冷剤を入れてくれるほうがよっぽど嬉しいんだけどなぁ。
4度だった朝からぐんぐん気温は上がり、20度になっている。
日本海が見える場所に車を停めて食事する。パッケージには文句を言ったけれどが、肝心の中身、この値段でこのお味なら満足。美味しかった(^^)v
パセ&ポプも一人前に御寿司^^。
若狭梅街道に向かう。
ガソリンスタンドにいた軽トラの荷台には犬が乗っていた。
大島半島へ掛かる橋をパトカーが渡っていった。
携帯からtwitpicに投稿すると、エラーメールが返って来た。
再度送信してもtwitterとの連携が出来ない、とメールが来てしまう。
どこかでネットにつなげなくては、連携を復活することが出来ない。
携帯で、その設定は不可能だった。
今回PCは持ってきていない。
iPodでなんとかしなければ…。でも、ネットにつなげることは容易ではなかった。別にかいいか~、と諦めつつあるわたし。
しかし、夫はこういうときわたしよりも俄然力を発揮する。どうにかネットにつなげようと道の駅に寄ってみたり、つながりそうな場所へと右往左往してくれた。
おかげで東舞鶴の某所で無事設定することができた。(しかし、この設定はまた解除されてしまい、結局昔ながらの「いまどこPYoN2」にアップすることとなったが…。)
ほっ、としてまた車はまた先へと進む。
舞鶴湾に差し掛かると、目の前にイージス艦の姿が現れた。軍艦が所狭しと詰め込まれている。日本海側の最重要拠点となる海上自衛隊舞鶴基地だ。国道27号線のすぐ脇に現役ばりばりの軍艦があってもいいの?と少々心配になってしまうが、海側からは複雑に入り組んだ地形になっているらしい。
『舞鶴湾は若狭湾の一部をなし、湾口が北北東の方向を向いたY字の形状をしている。湾口の幅は約700mと狭い。そのため、湾内は極めて静穏であるほか、湾内の干満差が最大でも30cmと極めて小さい。平均水深20mで、また四方を300~400m級の山で囲まれていることから、強風や荒天を避けることができ、良港としての条件を備えている。また日本海から湾内を目視する事ができないため、軍事上の拠点として重要視された。wikipedia』
横浜のような、函館のような、小樽のような…遠目なのでどこに似ているかわからないけれど、レンガ倉庫も並んでいる。
近くには海上保安学校があった。防衛大学校と同様に学生とは言え国家公務員らしい。授業料は無料で、給与、ボーナスがもらえるそうだ。しっかり日本と日本人の安全を守ることに従事してくれるのならもちろん有難いことなのだけど…。
16時、前も寄ったことのある「とれとれ市場」に吸い込まれるようにまた入ってしまった。
帰路ならばおみやげを買うことも出来るし、近くでキャンプするなら魚介類を購入できるけれど、今日は車中泊の予定なので火を使わずに食べられるものしか買えない。
ぐるっと周って外に出ると、小さなログハウス風の「魚なみ」というお店があった。フライ定職や焼きそば、つみれ汁、うなぎ丼などを出している。
小腹が空いたという夫がつみれ汁をテイクアウトして、パセ&ポプの待つ車で食べる。つみれは練り物ぽかったけれど、つゆはホォっとする味だった。
雨が降り始めた。
小高い山と、緑の河川敷に挟まれた由良川沿いを走っていると、透明だった川の水が泥水に変わった。上流ではひどい雨になっているのだろうかと心配になったが、すぐ上で河川敷を掘り返す工事をしていて土が川に流れ込んでいたためだった。
わたしたちの頭上は黒い雲がたちこめている。行く先の空が明るいことが救い。
黒い雲を連れて行くことのないよう下を通り抜ける。トンネルを出たら、雲は追ってきていないようだった。山に感謝する。
温泉もあるという道の駅「農匠の郷やくの」に寄って見た。
どこに温泉があるのかわからず、車でうろうろ移動してみるがわからず。帰ってから調べてみると広い施設のようだ。それに気付かずわたしたちは早々に立ち去ってしまった。小さい道の駅も少々戸惑うが、大きすぎるのもまた困る(笑。
和田山のジャスコに寄って夕食を購入。
雨が降った形跡もなく、カラカラに乾いている。この先、雨に降られないとも限らない。歩けるときに、パセ&ポプの散歩をする。
30分も走らずに、道の駅「但馬楽座」に到着した。
昔はにぎわっていたこともあるのだろうか。
少し寂れて侘しい感じがする温泉施設が建っている。その傍らに新しい道の駅としての施設が並んでいた。女子トイレは古いタイプの和式が3つ。手洗い場はひとつだけ、とこじんまりしている。
雨は上がっているけれど、まだ乾いてはいなくて、パセ&ポプを散歩させると汚れそうだ。レインドッグガードを着せて歩くことにした。
駐車場内に停まっていたキャンピングカーから、ヨーキーさんがパセ&ポプに向かって叫びはじめた。オーナーの方が、わざさわざ出てきてくれて、ご挨拶^^
我が家にとって最優先のパセ&ポプの散歩が済んだので、交代で温泉に入りに行く。
温泉だけが稼動している建物。温泉がなかったら廃墟に近い。
そんな閑散とした施設の温泉は、ぬるぬるとした泉質で、驚くほど肌がつるつる!
温泉から戻ると、夫がパセ&ポプのごはんを温めてくれていた。家から凍らせたごはんを3食だけ持ってきている。今朝そのひとつを食べ、今夜は2つ目。
車内のカーテンを閉めて、食事にする。
駐車場には3台ほどの車中泊組がいるようだ。
9号線八鹿バイパスの外灯が並んでいる。
その灯りの下を、間隔を空けて赤いライトを光らせた車が走り去っていく。
車が入ってきた。
車中泊だろう。
空には星が瞬いている。
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2010年4月30日のルート
新潟県妙高市 ~兵庫県養父市但馬楽座
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