夜中、少し冷えた。
パセリがわたしの足の上に丸くなってぷるぷると震えていた。
夫、ポプラ、わたしと寝ていたので、ポプラとわたしの間にパセリを引きずり込んだ。4本の川の字になったら落ち着いたらしい。なんで自分から入ってこなかったんだろう。
いくら暖かくてもシェルの三角窓を開けて寝てはいけない季節だった。
しかし、ストーブを持ってこようか悩んだけれど、持ってこなくて正解。
6時に起き出してパセ&ポプと散歩に出かける。
キャンプ場を出るとき、管理人さんちのゲンちゃんとマックスがやってきた。
パセリはうれしくてうれしくてシッポをぷりぷり。ポプラはシッポをたたんで夫の後ろに隠れてしまった。
散歩しながら、以前夫がお風呂で利用したことのあるホテルをチェックするつもりだった。
車の通りが少ない湖畔沿いの林の中を抜け、ホテルに近づいてゆくと、ずいぶん静かな雰囲気に見える。
連休も終わったから閑散としているのだろうか。
ホテル玄関の目の前に立ち、ガラスドア越しに中を透かして見ても人気がない。客室があるだろう2階以上の階の窓も締め切られている。すでに営業しなくなって時間が経っているようだ。
交通網が発達したのと、高速割引で宿泊せずに帰ってしまう人も増えていると聞く。宿泊していた人たちが、今より何倍も多かったとは思えないけれど、これまで宿泊していた人たちが日帰りしてしまうようになったのだろうか。
キャンプ場の前を通り越し、このあたりでは人気らしいパン工房ささき亭に行って見ることにした。2.3kmほど先らしい。
濃い霧にあたりを覆っていた。なにもかもが白くかすんで幻想的な風景の中、パセ&ポプととことこと歩く。
霧が髪の毛に水滴を作ってきらきら光る。
ささき亭は連休明けで休むなんてことはない?
大体7時前にやっているの?
地元のパン屋さんツオップが6時半からオープンしているので、早くからやってる気になっているけれど、みんなそんな時間からはやっていない。
どこまで歩いても真っ白な霧の中。
いくつかキャンプ場を過ぎ、釣堀脇を通り、それでも見えてこないささき亭。
キャンプ場から歩き始めて1時間ほど経ったとき、やっと到着した。
そして、想像通り哀しくも「臨時休業」という札がわたしたちの目の前にぶら下がって現れた。
パセリは「また明日も来てみようね」と長いお散歩を喜んでいる。
今来た長い道のりをまたてくてくと歩く。
キャンプ場に戻ると、ぺこぺこのおなかを満足させるために早速朝ごはん。
パセ&ポプは、ブロッコリー、インゲン、水菜、にんにく、牛肉
わたしたちはお雑炊。
10時前、クロネコさんの車が我が家の寝室を運んでやってきた。
昨日5時頃頼んだ荷物がもう届くなんて、あらためて感動する。
早速Mossタイタンを組み立ててシェルの中へ。
あらびっくり。
もしかしたら冬はルームよりもいいかもしれないわ。
寒ければフライをかけて断熱効果も得られるし。
今回くらい暑ければ、3面メッシュで涼しさも得られる。すぐにもポプラはテントに入るとねだった。
パセ&ポプのリードをはずして中に入れる。
これでリードがなにかに絡まることなくうろうろできるだろう。
お昼はおにぎりと枝豆とブロッコリーと海老。
テントでパセ&ポプと夫は昼寝をして、午後はカヌーで湖へ出ることにする。
カヌーを水際に運び、パセ&ポプにPFD(ライフジャケット)を着せると、パセ&ポプは足取り軽くカヌーに向かって突進、ジャンプしてカヌーに飛び乗った。
ポプラはカヌーに乗っていることが好き。
パセリはカヌーで誰もいない浜に行くのが好き。
目的は違えども、カヌーは好きらしい。
帰路、眠くてたまらないわたしはオリジナルチェアでこっくりこっくり舟を漕いだ。
夕方暗くなる17時前に夫は徒歩でお風呂に出かけて行った。
その間に今晩の芋っ子汁の準備をする。
夫が帰ってきて交代でわたしがお風呂へ。
以前からもう存続を危ぶんでいたホテル。現在は宿泊客はいないだろう。ホテルの修復・整備はまるっきしされていない。崩れそうなホテルの階段をあがり建物に入って行き、小さなフロントと書かれている場所で声をかける。
奥からおじさんが出てきた。料金を払うと「今なら貸切ですよ」と言われた。
ホテル自体が貸切よねぇ、と思いながら廃墟のようなホテル内を歩いてゆく。
脱衣所で、もしかしてさっきのおじさんキツネやタヌキじゃないわよね? 化かされてお風呂入っていたらいきなり草原の真ん中、なんてことないわよね。
少し不安を感じながらお風呂に入っていくと、シャワーでないし…(-“-)。
押したら時間制限で流れてくるカランで洗面器にお湯を貯めるしかない。しかも温度調節がうまくいかない。
お風呂場への出入り口に「熱かったら水でうめてください」と破れた張り紙があった。そういえば夫が熱くてゆっくり入っていられなかったと言っていたっけ。
なんとか身体を洗い、湯船に浸かろうと手を入れたら…
「?」
やけにぬるい。
温泉の注ぎ口近くは熱いだろうからと一番離れたところから入ろうと思ったがこれでは寒い。
注ぎ口近くに行って入ってみる。
うそっ。
ぬるいなんてもんじゃない。
注ぎ口を見ればその脇にホースが入っていて水がどぼとぼと流れている。
シャワーは出ないし、湯船はぬるい。
身体を温めるにも流れ出てくる温泉にあたるようにして身体の一部を暖めるしかない。
カラスの行水のわたしがこれでもかと言うほど長湯をしても一向に温まる気配のない湯船。
暑いだろうと涼しい湯上り用の着替えを持ってきたことを後悔した。
冷えた頭を持参のドライヤーで乾かし、暗くなったキャンプ場へとぼとぼと歩く。
草原に裸のまま放り出されはしなかったけれど、心も冷え冷えして放置された気分になっていた。
クーラーバッグ用の氷をコンビニまで買いに行ってくれた夫は、昨日の夜から出ていた頭痛がひどくなったらしい。
芋っ子汁で晩御飯を済ませ、早々と寝る。
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