温泉でこざっぱりとして出発すると、フロントガラスの汚れをとるのを忘れた、と窓を拭くために道脇のパーキングスペースに車を停めた。
そこには観光案内の看板が立っていた。
観光マップの中に描かれていた観光名所は数あれど、気になったのは「原尻の滝」。
所謂観光地は好きじゃないからどちらかと言えば避けてしまうのだけど、なぜか興味を惹かれて車を向けてもらう。
日本のナイアガラ、と呼んでいるそうだ。
国土に比例すればサイズもこの程度?
こりがはらへりのてきでつか?
原尻の滝に向かう道沿いにはどうどうと流れる柵のない水路がたくさんあった。
万が一足をすべらせたら、この水量の流れに勝てるはずはなく、飲み込まれてしまうだろう。足を踏み外したり、自転車でよろけたり、そんなばかなことをする人たちはこの辺りにはいないのだろうか。わたしは素面でも、とてもじゃないけど水路近くは怖くて歩けない。
原尻の滝はこういった水路が一箇所に集まって滝になっているのかもしれない。
見上げるのではなく、見下ろす滝。
水田風景が広がる平らな地面が突如としてぱっ くり割れている不思議な光景。幅は120m、高さが20mらしい。遠くから眺めていると人がとても小さくみえる。遊歩道もあって滝つぼへも降りてゆけるそうだ。 観光地としても有名らしく車が次々とやってくる。ざわざわしているので、パセ&ポプとの散歩も遠慮してすぐそばの道の駅「原尻の滝」に向かうことにした。
チューリップも名物らしい。
水路とチューリップ? 運河とチューリップといえば、オランダ?
原尻の滝のまわりの田んぼが4月頃には一面のチューリップ畑になるそうだ。ということは、富山の二毛作のようなもの?
ここがどういう理由からチューリップなのかはわからなかったが、チューリップの球根入りというももいろソフトを食べてみた。球根が食べられることにもびっくりしたけれど、考えてみれば球根食べちゃったら花は咲かない。ということは花も咲かないような球根を選んで使っているのかしら。なんだか、食べて良いのか悪いのかよくわからないソフトクリームだった。
そして、ずっと買おうか悩んでいた乾燥竹の子を買ってみた。九州に来ていても、今回はじめて見た乾燥竹の子。道の駅などにはほとんど置いてあったようだ。最初見つけたときは、20cmくらいの竹を縦に二つに割った形のまま干されたものだったが、南下するにつれてなぜか乾燥竹の子の大きさは小さくなり、ここにあったものは2cm幅くらいの細切りにされた塩付け乾燥竹の子だった。この乾燥竹の子、戻すのに時間がかかったけれど、歯ごたえは抜群。関東近郊でも買えたらいいのに…と思う。
食べ物の話が続く。
しかもまた、走っている途中で見かけた「からあげ」の看板に惹かれて…。あの鶏の天ぷらも食べおさめかもしれないと、車を向けて寄ってみることにした。
大体普段から唐揚げ大好きなししたろだから、これは避けて通れない場所のはず。
その唐揚げ店は、道の駅きよかわの道を挟んだ向かいにあった。入ってびっくり、有名店らしい。 ドアを開けると、3畳ほどのスペースにぐるりと並べられた椅子で待っている5-6人の人たちの目が、わたしたちに一斉に向けられた。頬を引きつらせ ながら壁に張られた品書きを見ると、1kg ○○○円(忘れました^_^;)、とボリューム満点の量。「いくらなんでもそんなに食べられない~」と悩んで、もっ と少ない量で買えませんかと訊ねると、1本2本という単位でも大丈夫です、とのことだった。
書いておいてほしいんですけど…。
出来上がりを待っていて、時間を持て余している人たちの視線が背中にずしずし刺さる。耳もパラボナアンテナのようになってこちらを向いている。
スパイシー、とり天、そしてモモという3種類だった記憶がある。
スパイシーととり天をししたろに頼み、わたしはパセ&ポプの待つ車へ戻る。
車で待っていると、メールが届いた。
-20分くらいかかるって。
注文を受けて、生から調理するらしい。
待つ甲斐はあった。
とり天はいわゆる和風の唐揚げ、スパイシーはフライドチキンという感じ。あつあつの揚げたてはぱりぱりでとてもおいしかった。残念ながら期待した鶏天ではなかったけれど…。冷めても美味しいらしいので、もう少し買ってもよかったかもしれない。
もう珍しくなくなってきた感もある石橋。
でも、やっぱりカメラを向けるってことは珍しく感じているのよね。
16時過ぎ、臼杵湾が見えた。
フェリーターミナルが近い。
夕方キャンセル待ちでフェリーには乗れるだろうか。乗れなければ予定通り予約した明日の7時の便。
今日の晩御飯もどこかで調達してこなくてはならない。
まずはスーパーに行くという話だったのに、D5はフェリーターミナルに滑り込んでしまった。
この前の静かなターミナルとは打って変わって車がびっしり入っている。車を誘導する人たちも出ていた。明日の7時で予約しているけれど、キャンセルが出れば早めに乗りたい、と誘導員に話す。
「あ~、たぶん2便先、遅くても3便先の19時発には乗れるでしょ。7番ラインに並んでください」
「えーっ!」
もう並んじゃうんじゃ、動けなくなってしまう。
だから先にスーパーに寄るって言っていたのに…。
もし今日フェリーに乗れたとしても遅くても18時までの便。四国に入って暗い中、泊まる場所を探すことはしたくなかった。車中泊で四国を廻った友人から四国の印象は「暗い」と聞いていたので、出発は18時までと決めていたのだ。この分ならわたしたちの予定通りだけど…。
売店もおみやげを購入する人でいっぱいだった。夕食になるようなものはない。
キャンセル待ちをするのはいいけれど、予約はどうなってしまうのだろう。
「先着順ですから~」というお答えが返ってきた。わたしたちの並んでいるのはキャンセル待ちのラインではなく、到着した順。予約した人があぶれてしまうことはないのかな。 予約の意味ってあるのかな。首を傾げてしまう。
17時発の便には大型バスが2台と普通自動車が25台吸い込まれて行った。
列は前に進む。
わたしたちは3番ラインの先頭になった。
この分だと18時発のフェリーに乗ることになりそうだ。
17時半、雨が降り始めた。
バイクの人たちはレインウエアーを着込んでいる。
「お知らせいたします。17時40分着のニュー豊予2は15分から20分遅れで到着する予定です」
四国三崎から来るフェリーが遅れているというアナウンスが流れた。
車の出入に時間がかかっているのだろうか。
あまりに小さい船に満杯の車で、いらぬ不安が湧き上がる。
いやだなぁ、雨まで降り出しているし。
もしも転覆したら…。
フェリーにはライフジャケットは人間の分しかないだろう。パセ&ポプにはちゃんとPFD(ライフジャケット)を持ってきているんだから、用意しておく?なんてこともちらっと頭をかすめて、笑いながらも目つき真剣だったりして、夫と話す。
17時58分、送れて到着したニュー豊予2は乗用車39台を吐き出した。
入れ替わりに、続々と佐賀関に並んでいた車が入り込んでいく。
18時10分、わたしたちもフェリーに乗り込んだ。
いつもフェリーに乗るとき関心するが、省スペース。実に見事に車を整列させてゆく。あと3cm、あと2cm、そんな単位で誘導されて緊張する。ドアはぎりぎり開く。
ドアを開けると重油の匂いが充満していた。
さてここから70分。
車とわたしたちは船でゆらゆらと四国へ運ばれていく。
この間のことはあまりネットなどで公開はしない方がいいと思うので割愛する。
長い間弊サイトをごらん頂いている方ならおわかりだと思うけれど、ここでも我が家が守りたいことはちゃんと承諾を得て守ることができた。
(もし、このフェリーを利用されることがあって不安だったら、詳しいこともお知らせできるので問合せなどからご連絡ください。ただし、これまでぴょんひょん・おーじにコメントやリンクなどしてくれている方に限らせていただきます。ご了承ください。)
2009年5月4日の情報ですが…
原則、ペットは車内留置です。
ケージ・バックを利用しても客室はもちろん甲板へも連れていけません。
車の窓を開けることは空気が悪いためにお薦め出来ません。
つまりペット連れで利用される場合は、温度に気をつけてください。5月はじめのこの日でも26度は超えていました。夏はまず無理だと思って間違いないと思います。もちろんそのときの気温にも寄るでしょうけれど…。
出航から約一時間後の19時20分、アナウンスが流れて、乗客は続々と車に戻った。
19時半、着岸。わたしたちはフェリーから吐き出され、追いたてられるように四国の地に降りた。
いやだ、もう暗い。
考えて見れば夜7時になれば辺りは暗いのだった。昔、北海道からフェリーで帰ってきて、夜に晴海に到着したとき、ライトをつけなくても走れるほど明るいと感じたことを思いだした。四国は真っ暗だった。
三崎のフェリーターミナルには四国側から乗り込む車が待機している。フェリーから出た車は停められる場所もなく公道へ追い出されていく。
いつか消えてなくなってしまうのではというくらい細く長い半島の暗い道を走る。
いちばん近い道の駅「瀬戸農業公園」も考えていたけれど、真っ暗なので通りすぎる。
10分ほど走って「きらら館」がでてきた。
駐まっている車は3台ほどで少々寂しい雰囲気だった。バイクが2台自動販売機の前に停まっている。ライダーたちはしばらく話をしていたが、エンジンを掛けると闇の中に消えて行った。
ししたろは八幡浜まで走ってなにかを買ってから、違う道の駅へ行くという案を出す。
しかしそれでは到着が22時を過ぎてしまう。買いものが出来る場所があるかも不安だった。パセ&ポプも今夜はまだごはんを食べていないし。
こういうときのためにも食料は積んである。
今夜はここにしよう。
わたしがパセ&ポプごはんをつくっているとき、ししたろがジェットボイルで茹でたサラダスパゲティにミートソースをからめて夕飯を作ってくれた。
誰が見ても、栄養・バランスどちらもパセ&ポプごはんの方がよろしい感じ。それは、わたしたちがパセ&ポプお馬鹿だからとも言えるけれど、家でも出かけていても、パセ&ポプの健康がいちばん。日常も、旅も、楽しく過ごせるのは、パセ&ポプが元気で傍らにいてくれるから。それが、わたしたちの元気の素でもあるから。
人が作ってくれるごはんはまた美味しい。ししたろがジェットボイルの吹きこぼれで「うわぁっ」と言いながらも作ってくれたパスタはとても美味しかった。
* * *
追い出されるように九州を発ってしまって、なんだか九州が名残惜しい。お別れを言わずに旅立ってしまったような気分になる。
明日からのことも何も決めていないけれど、眠気が襲ってきた。
惜別の思いと明日への期待と不安が入り混じったまま、いつの間にか眠りについてしまった。
走行距離だいたい210km
(フェリー約30km含む)
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