錦江湾沿いに桜島へ向かう。
その昔、この桜島を見たのは磯庭園からだった。そのときは五月半ばで、鹿児島湾に入った客船から降りての観光だったはず。やはり暑かったことを覚えている。
大正時代の大正噴火で、大隈半島と地続きになったという桜島。
橋を渡って入るとは思っていなかったけれど、なんだかわたしたち橋を渡っている。
桜島に入ると、ぽっかり海に浮かんだ山の裾野にいるような気がした。浅間山の鬼押出しとはずいぶんちがう。意外と緑が深く、噴火口も遠い。水無川というのか、土石流の道というような大きな溝が火口の方か海に向かって何本も続いている。そして、道沿いにはコンクリートの塊で出来た10数人くらい入れる退避壕があちこちにある。人が集まっていたので車の窓越しに見て見ると「埋没鳥居」だった。人ならすっぽりと埋まってしまうくらいの深さだろう。こ の鳥居が埋没した時に地続きになったらしい。
そのときの爆発の前兆は2週間以上前から始まり、数日前には「群発地震、絶えず鍋で湯を沸かすような音、列車がレールを通過するような地鳴りの音がつづき 温泉といわず、石垣のすき間といわず、やたら熱湯や水が吹きあがり地裂けも山崩れも現れはじめ(「崩れ」幸田文著より)」ていたらしい。爆発前に非難脱出は始まっていたのに、学校・役場・警察などの知識人と呼ばれるような人たちは測候所の「桜島の噴火ではない」という誤報を信じて、非難騒ぎをしていた人たちを嘲笑していたが、結果災禍を被ることになったそうだ。
また噴火するとわかっていても住み続けている人たちがいるのは、不思議な気がするけれど、関東でも大地震が来るとわかっていて暮らしている人は桜島以上にいる。
ただ、現在関東地方に暮らしている人間に前兆を感じることができるかどうか…。未完全な科学を信じてしまう方が多い気がする。
海沿いを走る道からはずれと奥へと入り込んでみた。
「ちょっと待て?
見えぬ獲物の再確認」
って草むらの中に生えているけど、その看板が見難いし、ここで猟してるの? 背の高い草が茂っていて見通しの効かない場所で、お願いだから撃たないで。
また海沿いに出た。
対岸の鹿児島は、ビルが乱立し、大都会に見える。
道の駅桜島に寄ってみる。
さすがGWらしく大賑わいで、誘導の人もいる。ここで買った芽ひじきは関東で買う黒く小さなものとは違い採ったままのつながった形をしているし、色は茶色い。そして、熱湯につけると緑色になった。歯ごたえが抜群だけどちょっと磯臭い。って、それか本物なのかな(笑。
海の向こうに小さな富士山のようなシルエットが見えた。開聞岳だった。
再び橋を渡り、牛根峠を越える。峠越えの道でクロネコさんとすれ違った。うちから発送している商品もこうやって九州の端っこまで届けてくれているのだと考えると、なんだか感慨深いものがある。
16時、曽於市に入り、しばらくして宮崎県に入った。
宮崎県はペットに不親切だとネットで見たことがある。先入観を持ってはいけないかもしれないが、実際に犬連れ禁止と書かれた道の駅にある看板の写真が掲載されていた。そんなところは利用したくない。
九州にも野尻湖がある。そこを今日の目的地にしていたが、明日高千穂のキャンプ場へ行くことにして、都城から高速に乗って宮崎市へと向かうことにした。
17時過ぎに宮崎で降りる。
ETC出口に進む。前方に車がいる。あれ、動いている様子がない。停まってる。動かない。おかしい。他にETC出口はなく、その車の後ろに停車。どうも バーが開かないようだ。カードを入れたり出したりしている様子。係員がやってきて、バーを開け、その車を誘導して行った。入ってきたときは問題なかったの だろうか。
そのままバーは閉まらず、開いたまま通過する。(この旅の後、わたしたちも開かなかったことがあった。要注意です。)
宮崎市街は渋滞していた。宮崎県知事東国原さんが宮崎に高速を、とよく言っているけれど、これ以上車が流入してきたらこの渋滞はどんなことになってしまうのだろう、と次回はいつこの道を通るのかわからない私がぶつぶつ言ってしまう。
宮崎市を過ぎると途端に地味な景色に変わった。日も傾き始めているので、スーパーを探さなくては。ナビで探すと、Aコープが一軒のみ表示された。
そこへ向かう途中、新しそうなスーパー発見。車を滑り込ませる。今夜の宿泊場所がまはまだ決まっていないので、買い物の前にパセ&ポプにごはんを あげてしまおう。ランチジャグに入れてきたパセ&ポプごはんをお皿に移す間、夫はパセ&ポプを散歩に連れ出した。
ドアを開けると漂ってくる香しい匂い。
戻ってきた夫が「におう~。牧場くさい~」と叫ぶ。
そんな中で、パセ&ポプはごはんの時間。
パセ&ポプがごはんを食べ終わり、スーパーで買い出しをする。
誰もあの香しい匂いに顔をしかめる人たちがいないのはなぜだろう。
カツオとマグロの柵を切ってもらった。切ってもらうと、大根のつまが敷かれわさびが付いた。日本酒がどこでも端っこに追いやられているのはやはり九州なのだろう。焼酎は目を見張るほど並んでいる。
焼酎を飲まない父が以前くり焼酎は美味しかった、と言っていたことを思い出し、栗焼酎を買ってみる。飲めなかったら父へのおみやげにする魂胆。
さ、これで準備完了。今日の宿泊地へ向かおう。
どこにしようか?
「日向」という道の駅。
「犬の散歩禁止」と書かれていた道の駅だった記憶がある。もしかしたら記憶違いで、道の駅として適当と書かれていたところか。脳裏でゆゆらゆら。
最初、その悪い記憶の方だったらイヤだからと山にある「道の駅とうごう」を目指すことにした。ナビが選んだルートは、17時を過ぎて暗くなった川沿いを行 く細いくねくねの山道だった。車の姿もなく、なんとなく嫌な雰囲気。お互い黙っていたけれど、夫もそう思ったのか、数キロ走ってから、やっぱり日向を見て みようか、と言う。2キロ先にあるのだから見ておいても悪くないだろう、と。もしかしたらわたしがこの道イヤだ、と思ったことに気付いたのかもしれない。
2kmはあっという間だった。
海のそばに立っている道の駅日向には車がすでにいっぱい駐まっている。立ち寄りだけのも多くいるようだ。近くの温泉に行って、ここに戻ってきて車中泊しようと話している年配のグループもいた。
ふと見ると、「犬の散歩禁止」と書かれた看板が立っていた。やはりここだったか。
小さな駐車スペースで車と人がごった返す日向を立ち去ることにした。あまりに狭いので犬の散歩は、禁止されなくても危険かもしれない。でも、ああ書かれて いること自体で犬連れはここを利用しないだろう。マナーの悪い人は、確かにいる。でも、ひとからげに禁止することはないし、その措置は道の駅としてはどう なのだろう? 立ち寄る人たちの制限をしても道の駅として存在できるのならば、道の駅ガイドや看板にその旨大きく書いて欲しい。
耳にした日向サンパーク温泉「お舟出の湯」も覗きに行って見るが、巨大なアミューズメントパークのようで、駐車場も車でいっぱい埋まっていた。駐車場でぐるっとまわり、そのまま出る。
海沿いを北上していくと、「海の駅」と書かれた看板があったと夫言う。暗闇の中でわたしは気付かなかったけれど、一枚見た看板を頼りに右折して見た。
行けども行けども真っ暗な道。
そして、出てきたのは有料道路の入り口。仕方ないので有料道路を避けるために左折し、さっきまで通っていた10号線に戻る。帰ってきてから調べて見ると、もっと10号線で北上した場所に「海の駅ほそしま」 という海の駅があったらしい。有料道路を使えば近道のようだけれど、案内がなければその道を使えるはずもない。だいたい、「海の駅」ってなにかわからな かったし…。トイレが24時間使えるのかもわからない。最近、「山の駅」とか「房の駅」とかいう道の駅に似せた施設があちこちにできているけれど、道の駅 にしない訳があるのかな。
24時間利用可能な駐車スペース、トイレ、情報提供施設を備えていることが道の駅の条件ならば、「道の駅」ではない「~の駅」はのいずれかの条件に合わな いということも考えられる。あとは、道の駅の間隔が10km未満だと新しい道の駅の登録が受け付けられないということもあるようだ。いいじゃないの、 5km間隔だって!と思うのは素人? 競合するからって、受け付けないのは本当の目的からずれている気がするけれど。やってみなければわからないし…。
なんてことを話しながら、結局、暗い夜道をまた「道の駅とうごう」に向かうことにした。パセ&ポプにごはんをあげておいて良かった。
ナビが選んだルートは、さっき向かおうとしたときより大分北にいるので、国道の片道一車線のそれなりに広い道。通っている車もいる。快適な道の出現に、あの細い山道を行かなくて正解だったかも、と何度も話す。
20時半、道の駅とうごうに到着した。
広い駐車スペースには、車中泊らしい車が数台駐まっている。奥にはスーパーもあるようだ。車を駐め、シェードを付けてカーテンなどを閉めているとき、スー パーで買い物をしてきたらしいおばあさんが2人連れ立ってこちらに歩いて来た。きっと近所のおばあさんたちなのだろう、と思ってみていると、駐めてあった ハイエースに乗り込んでいった。どうやらおばあさんたちも車中泊らしい。運転できるとは思えないので他にも人が乗っているのだろう。いったいどうやって寝 ているのか、不思議だけど…。
わたしたちの夕ごはんとパセ&ポプのお夜食は、スーパーでカットしてもらったカツオとまぐろのお刺身。そして、わたしたちはそれ以外に、ほ うれん草の胡麻和え、宮崎鶏の照り焼きなど。くり焼酎は、やっぱりわたしは苦手。ししたろは最初「!」と渋っていたけれど、飲み始めるといけるかも、と飲 んでいた。
ここ道の駅とうごうは、日向と違って出入する車も少なく、ドアの開閉も躊躇するほど静かだった。ただ、虫は多いのかもしれない。トイレの脇や、駐車場脇に虫を集めるための真っ白いボードが設置されている。
夜間、外に出ることはなかったのでその真偽のほどはまだわからない。
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