しかし、目指すキャンプ場はトンネルから抜けて出たその隣の町だった。そうとは知らず、なかなかキャンプ場が現れない。
また今日も放浪になってしまうのだろうか、わたしたち。
メインの通りと川を挟んだ道を走っていたので、人に聞こうにも人の姿はなく、川を渡るには橋まで走らなければならない。キャンプ場はナビにも地図も出ていない。
次の町の橋で渡り、誰かに尋ねてみようかと話していたのだが、橋が出てくる直前に記憶していたキャンプ場の名前が書かれた看板がぽつんと現れた。記憶にまちがいはなかったとホッとする。
想像していたよりこじんまりとした町営のキャンプ場だった。入っていくと、10台ほど停められる駐車場はほぼ満車で、いくつかテントも張られていたが、撤収中のテントもあった。
キャンプ場を利用する場合は、料金をボックスに入れるようになっている。
ここにずっと何年も通い続けているというおじさんが、張るのはどこでもいいんだよと声をかけてきた。
昨日まではテントを広げるところもないくらい混雑していたそうだ。今はもう選択する余地もかなりある。ただし、子供たちが駆け回っているので、パセ&ポプが落ち着けるように、子供たちのいるサイトから離れた場所を確保したかった。幸い、かたくり保護スペースとご夫婦らしき方のサイトの間、つまりキャンプ場の一番端が空いていたのでそこにテントを張ることにした。
キャンプ場を見下ろすように囲んでいる山には雪が残っている。子供たちはその山裾の残雪を滑ったりして遊んでいる。
お天気がよく暑いくらいで、小さな黒い虫が目の前をぶんぶん飛んでいる。
今回は車脇にテントを張ることを前提に荷物を詰めてきた。ザックにしようか迷ったが、ここ最近気に入って使っているパドラー・トートⅡにした。このパドラー・トートⅡ、パドリング用のものじゃなくても結構重宝で、最近出番が多い。
備え付けの木製のテーブルいっぱいいっぱい使って、採ってきたわらびを一本一本並べて干しているおじさんがいた。神経衰弱のようにあっちこっちとひっくり返している。
その脇を荷物を持って移動するので挨拶すると、おじさんが「かっこいい(車だ)ねぇ」と褒めてくれた。カヌーを載せていると嫌でも目に入ってしまうだろうし、車もカヌーもルーフボックスも赤だから、話題にするには丁度いいのだろう。突然の褒め言葉に顔まで赤くなったかもしれない(笑)。
このキャンプ場は、どちらかといえば年配の方たちの静かな隠れ家的存在の趣がある。あるいは、昔懐かしい「田舎」の風景で、土間がある家屋の前に広がる庭。門から入っていくと、庭を眺めて縁側にいたおじいさんやおばあさん、納屋で仕事をしていたおじさんおばさんが「よく来たね~」と迎えてくれるような雰囲気。
でも、馴れ馴れしくもなく、程よい距離感を保っていられる。
たまたま出会った方たちがそうだったのかもしれない。キャンプ場の作りはいたってシンプル。特に書き記すようなことはない。
キャンプ場の清掃を請け負っているという住民の方は、この村に嫁いできたお嫁さんという感じで、小さなトイレの手洗い場に牛乳瓶をおき、折れていたのかつぼみを持った枝を挿して帰っていった。
明日また移動する予定なので、今夜は地べたりあん。
HEX3にアライテントのツーリングタープ。
クレージークリークのオリジナルチェアにZライト(スモール)。ガダバウトも運んでくれたけれど今夜はあまり必要なかった。
何度か往復して、荷物を運ぶ。といっても小さなキャンプ場だから面倒なほどではないけれど…。なにより辛かったのは虫。残雪がある方は山から下りてくる空気が冷たく虫もいないようである。境界線を越えると虫がいる地帯になる。それでも、夜になれば残雪がないところも冷えるはずだし、虫もいなくなるだろうとしばらくまとわり着かれることを我慢することにした。
果たして日が翳り始めると虫たちはどこかへ消えていった。
HEX3の中にはネスト。
そして、プロライト3とZライトを敷く。
入り口にはフリース。ひざを突くので入り口には必ず何かを敷く。
しかし、奥にひざをついて行った時、石よりも軟らかいけれど異物が!!
しかも、まだ完全に膨らんでいないとはいえプロライト3の上にひざを置いているのにわかるほど。これは寝ていて辛くなる。と、原始的な方法で異物を取り除く。
少しずつ、少しずつ、フロアの下の異物を移動する。
杉の木の下。杉からの落ちてきた実がこんなに気になるほどのものとは思っていなかった。
HEX3を張る前に取り除いたのは栗の実だった。杉の実もかなり手ごわい。これからは気をつけよう。杉は花粉だけではなく実にも要注意である。
さて、今夜はベーコンとセロリとキャベツとトマトの煮物。パセ&ポプ用もほとんど同じ材料でごはんを作りはじめた。
ちょうどキャンプサイトは2つの川が交差する間に位置している。融けた雪のせいなのかかなりの水量があり24時間ごーごーと唸っている。おかげで、隣のサイトの声も音もなんにも聞こえない。おそらくこちらの声も音もどこにも聞こえていないはず。
川を挟んだ向こう側の広場で、飼い主とやってきた犬が解き放たれて駆け回っている。それはそれは喜んで走り回っている様子で、あとでパセ&ポプも遊ばせてあげようとごはんをつくりながら眺めていた。
ししたろは近くを散策しに出かけていって、ふきのとうを採ってきた。
遊んでいた犬も夕飯に戻って行ったらしいので、パセ&ポプと遊ぶ。
夕方の散歩も楽しんで、次はごはんの時間。
まだでつか?
振り返ったポプラのおひげが~。
どーしてポプラはすぐ真っ黒にしてしまうんでしょ(+_+)
まだでつよね?
今日の白いごはんは、パセリの横にある「SVEA NC67」でししたろに炊いてもらいました。
R: おまたせしました。いただきましょう!(^^)!
昨晩もそうしたけれど、HEX3のネスト2箇所のペグをはずして前室を作り、そこで調理したりするととても暖かい。
通常は一箇所はずしておいて、靴などの置き場にする。寝るときは、靴がなにものかの住処にされていると怖いから、場所によっては中に入れる。こういうことを忘れずにしてくれるのはししたろで、感謝している。朝起きて靴に足を入れた瞬間叫ばずにすんでいるのはししたろさんのおかげ。
夕方になって我が家裏にサイトを作った男女三人は、それぞれソロテントを張った。
タープはなく、焚き火をして外で暖を取っている。冷え込んでいるので、薪にする枝を補充するために何度も探し回っている。
予報では雨。
話し声は聞こえず、川を流れる水の轟音が重く静かに響き、夜が更けていった。