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中国、近畿、四国もちらっと放浪旅 05 羅漢~日原

羅漢の朝羅漢スパの朝は不思議な世界だった。
5時くらいからエンジンを掛け続ける人。
ビデオカメラを片手に駐車場からぐるっと撮影をしている人。
どこで洗ったのか何枚ものオムツを洗濯干しに掛け、軽自動車のサイドにぶら下げている人。そういえば昨晩、赤ちゃんを片腕に抱えてお風呂に入っているおかあさんがいた。乳幼児を抱えて車中泊旅をしているなんて、たくましい。しかも紙おむつではなく布オムツを洗濯しながら…。でもどこで洗濯しているのだろう。

となりの車も朝早くからエンジンをかけている。そしてその車の中からは、こちらの窓を全部閉め切っているにも関わらず「さちこ」「ダンシング・オール・ナイト」「いもきんトリオのなんとやらハイスクールララバイ(たぶん)」というメドレーが延々と続いて聞こえてきた。音楽だけならまだしも、車を開けるたびに排気ガスも流れ込んできてしまい、閉口した。

トイレではお化粧渋滞が起きている。車中泊って迷惑、と思ってしまう(苦笑。お化粧するなら車の中でこっそりしようよ。

8時に出発する。

488号線沿い水仙街道と書かれている通り、道の両側は溢れるほどの水仙の咲く道が続いている。丁度水仙が満開の時期だったので、両側に水仙の黄色いラインができ、とても華やいでいた。

水仙がなくなると、水が驚くほど綺麗な川沿いの道に変わる。

野営したいふと目にした河原に車を進める。一台の軽トラックが停まっている。釣り人が釣り用意をして川に出るところだった。

適度な河原の広さ。
静かな水の流れ。
明るい山に囀る鳥の声。

焚き火の跡もあるので野営している人もいるのだろう。
夫はここで野営したいと心底思っているようだった。
なかなかここを離れない。
しかし、ここは車の通りもあり、釣り人もいる。
トイレに隠れる場所がない、というのが一番の問題。

夫は野営したい気持ちをその場所からはがすようにして車に乗り込んだのだろう。走り出してからも、あの場所はいい、すばらしい、と口にしていた。

標高が上がるに連れて道端にはヤマウドやわさびの姿が見え出した。

裏匹見峡島根県に入ると急カーブの多い細く険しい道になった。

裏匹見峡
わさびと清流の匹見

ブナ林と熊笹が広がった。
熊笹がおいでおいでと誘う。
わさびを発見して車を停めて見ようとすると、なぜか後ろから車がやってくる。慌てて車に乗り込み発進を繰り返す。後ろから来た車を先へと道を譲ると、その車が先でやはり我々と同じように何かを発見して車を停めていることも多い。

街中では窓は開けないが、虫の少ないこの時期に山の中で窓を開けて走るのは気持ちがいい。車内にもフィトンチップが充満する。朝思い切り吸わされてしまった排気ガスが体内から抜けていくようだ。

なんの下調べもしていないのでどんな景色が待ち受けてくれているのかまったくわからない。
やっと春の兆しを感じているかのような山の頂上付近では木々の枝先がほんのり赤く染まり、山桜の花がそこだけ光るのように花を咲かせている。

地面近くでも小さな花が咲き始めている。
雪が融けた水だろうか、窪みを下へ下へと流れていく。

ポプラも外の景色を興味深く眺めている。
がたがた道は特に身を乗り出すポプラ。
カヌーでも大きな波を越えるようなときは一番前を陣取るし、林道でも立ち上がって外を眺める。反対にパセリは、車の場合だけど、ひっくり返って寝ている。どちらもどういう性格しているのだろう(笑。

木々に覆われていた山肌が、岩をむき出しにする場所も出てきた。
映画のセットのように綺麗過ぎる一角があったり、まるで畑のようにそこだけ違う植物が生え朽ちている場所もあった。人の手が随分入っているように思える場所を見つけ、首をかしげる。

集落跡集落跡2その場所にそぐわない一本の、白い花を咲かせている大木がまっすぐ空に向かって立っていた。広場のように開けたその場所に、ふと見ると碑が立っている。

この地には集落があったらしい。いくつかの場所に屋敷跡の碑があった。
屋敷の塀の基礎だったのだろう石があったり、水を引き込んだ跡もある。
石を重ねて囲われた畑もあちこちらに作られている。

こんな山の奥深い場所に昭和45年(1970年)まで人が暮らしていたのだ。
碑には、個人の引越しではなく、集落の移転と書かれていた。

裏匹見峡集落跡を見つけながら進んでいくと、渓谷の名にふさわしい景色が出てきた。
さっきも書いたようになんの前知識もなく訪れているので、わたしたちが始めて発見したかのように勘違いしてはしゃいでしまう。

調べてリストしていたキャンプ場がこのあたりにありそうだった。
だんだん近づいてきたと思っていたら、道に人が溢れている。
そんなに賑やかなキャンプ場なの?

匹見峡春祭り「匹見峡春祭り」というイベントをしているらしい。キャンプ場にはテントも張られていたが、キャンプ場が賑やかなのではなく、イベントに人出が多いようだった。
町が近いのだろう。
携帯にもメールがじゃんじゃん入ってきた。
交通規制までされていて、そのイベントを目的にやってきたのだと勘違いされてしまい、イベントの駐車場へと誘導されてしまった。

ミステリーハウス(匹見ミステリーハウス)なるものもあった。外から見ても一目瞭然で傾いているだけなんだけど、入ると面白いのかな。

神社に迷い込んだ誘導されるがまま進むと、抜けることは出来ず、行き止まり。匹見は「迷路とパズルの里」とも称しているらしいが、まさかこんなところではまってしまうとは(笑。
樹齢400年といわれる、見上げるほど高くそびえている夫婦榧の立つ神社があった。

迷い込んだのもなにかの縁、とパセ&ポプと散歩をすることにした。その間、同じように誘導されてはまってしまったらしい迷い子たちが次々にやってくる。
さっきわたしたちを抜かして行ったバイクの人たちもやってきた。きっとイベントを覗いてからこちらに誘導されてしまったのだろう。

麓へ麓へと降りていく道。
眼下には赤い屋根の集落が見えた。

ここが津和野?
ゲコゲコとカエルの声が山間の集落に響く明るい農村という雰囲気だ。

麓に下りて、夫が探しておいたキャンプ場を覗いてみることに。
枕瀬山公園と書かれている。
枕瀬山天文台のある山にキャンプ場もあった。
駐車場に車を停めて管理人さんに聞く。

10張り張れるだろうかというこじんまりとしたキャンプ場。すでに2張りほどテント・シェルターが張られ、同時にソロの人が私たちと同じように管理人さんに訊ねていた。
現在お昼前。今夜キャンプをする予定はなかったのでまだ食料は調達していなかった。
ここでキャンプをするかまだ走るか。
キャンプ場のある山から下りながらどうしようか話す。
このあたりでキャンプというのは悪くない。
買い物が出来ればここに決めよう、と思ったら目の前におまわりさんの姿があった。
駐在さんだ。
このあたりで食料品を買えるお店はありますか?
若い駐在さんはパトロールから帰ってきたところらしく、じゃ地図を見ながら…とわたしを促して駐在所の鍵を開けた。
コンビニがいいですか、それとも商店の方が?
(コンビニもあるんだ!と思いながら)出来れば商店を…と頼む。
それならば…えーと、と開くと机いっぱいになるくらい大判の住宅地図を広げて説明してくれた。
きっと説明したいんだろうな、と思いながら聞く。

おまわりさんから聞いたお店に向かって走り、地元御用達の商店で食料を購入した。

もしもうキャンプ場がいっぱいだったらどうしよう、という不安も持ちながら再び山を登っていく。

暑い、暑い。
山に上がって行ってもじりじりと暑い。
わたしたちはいいけれど、パセ&ポプたちは大丈夫だろうか。
まだ日も高い。

枕瀬山キャンプ場テントがいっぱいになっていたらどうしようなどという不安なんて杞憂に終わった。一緒に訊ねていたソロの人のテントは張られていたが、他にはまったく変化がなかった。
お金を払って設営をする。

夕方になって管理人さんがやってきた。
車と一緒に設営したカーサイドリビングだとオートキャンプになるので、800円追加だと徴収にきたのだ。1000円渡すと、「あはは、オートは1000円だったよ」とお釣りはなく領収証だけを持ってきた。プラス1000円でもとても良心的な価格だけど、どんどん上がるのはなぜ? ほかの3組の人たちも車を横付けしているのだから、オートキャンプが特別珍しいわけではないと思うのだけど…(苦笑。

今日は遅くにもう一組増えるそうだ。
鳥取からわざわざ来るんだよ、大変だよね、と管理人さんが言っていた。

わたしたちは千葉から来てるってこと、気付いてないみたいだった(笑。

山の上には何種類ものアンテナが立っている。
こんな辺鄙な場所なのに携帯がばっちり入る。
いいのか、悪いのか、微妙(笑。

気温が29度になっていた。
洗濯して、シャワーを浴びる。
パセ&ポプたちにも水をかける。迷惑そうにしているけれど、効果覿面。

枕瀬山キャンプ場キャンプ場から見下ろせる集落を眺めながら、これが津和野?とまだ首を傾げていた。
どうやらここは津和野町日原という場所らしい。いわゆる世間で言われている津和野は隣の駅周辺(笑。

今夜はカーサイドリビングの中にHEXのネストをぶら下げて寝室とした。
パセ&ポプもネストの中で自由になる。

夜、トイレに行くと、電気がつけっ放しにされていて虫があちこちにへばりついたりバタバタしたりしていた。虫の時間、虫の天国。ぎょっとして、入れず。幸いなことに少し歩けば他にもトイレがある。お願いですから、夜は電気を消しておいて。

トイレをはしごして歩いたおかげで空を見上げる時間が増えた。
天文台があるのが納得できる。
星が煌いている。

お隣のテントの人たちはテントから出て、地べたに寝っころがっていた。
そういえば、秋田の空の下ではそれをやっていた、わたしも。
今夜は、立ったまま見上げて、また静かにネストに入った。

***

2010年5月3日のルート

2010年5月3日のルート
だいたい110km

2010年5月3日





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