動いてもハチはポプラの後ろ足から離れない。
思わず首にかけていた手ぬぐいを手にして「いけないんだよ、ほんとは」と頭のどこかで響くのを聞きながら「じゃ、どうすればいいのよ!?」とバシバシとポプラに向けて手ぬぐいを振って、ハチを払いのけた。
ハチは一匹ではなかった。
ししたろが「戻れっ」と叫ぶ。
わたしの頭の周りにもハチが飛んでいる。
パセリもポプラも言われるがまま、いま来た道を戻る。
黙々、と。
でも、心の中では「大丈夫大丈夫、ポプラは大丈夫」と唱えながら、数分前のことを出来る限り思い出そうとしていた。
ハチの姿がなくなって、ホプラの後ろ足の様子を見た。
赤くもなっていない。
腫れてもいない。
刺された痕も見当たらない。
もしかしたら刺される前だったの?と祈りながら足早に進む。
ドロドロの板敷きまで戻ると、ひとりで歩こうと数歩歩いたホプラは泥に足を突っ込んでしまい、その泥足をわたしのひざにつけて「抱っこ」とせがんだ。脇に抱えると服もべったり泥だらけ。
まぁ、泥だらけでもいい。元気ならいい。今はハチの影響がなかったことだけを願う。
サイトに戻ってバケツに水を汲んで、パセ&ポプの泥足を洗った。
ポプラの後ろ足をまた見てみた。
残念ながら刺されていた。
ぷっくらと赤く腫れて、刺された痕もしっかり見えてきた。
エクストラクターはさすがにつかえない。きっと虐待されていると思うだろう。それにもう遅い。
こういうときのための虫刺され用薬を用意していたはずなのに、ファーストエイドに入っていない。
少しパニックになった。
何度も何度も同じことを繰り返す。
薬がない。薬がない。
薬を探しながら病院に行くべきなのか悩んだ。調べてきている病院はとなりの町。
少し頭が冷えてきたかも。
病院に行ったところで薬を塗るかのませるかだろう。
塗り薬はあきらめて、蛇やハチに刺されたとき用に病院で分けてもらっていた解毒剤を飲ませた。

歩いた疲労感より、ハチに刺されたこと、いざというときに薬が見つけられなかったことにわたしはぐったりしてしまった。
落ち着いて探すと、薬はわたしが持って行ったエクストラクターと一緒にしてあった。ポイズンリムーバーを使うときはすぐに薬も使うだろうと一緒にしてあったのだ。忘れていれば意味がないどころか今回のようなことになる。情けない。
それでも、ポプラは1時間もするとルームから外に出ると言うようになった。尻尾も45度くらいまで上がっている。
食欲も変わらずある。
そういえば、人間がハチに刺されたらどうするのか。
リムーバーですぐ毒を抜き、薬をつけるくらい。もしスズメバチだったら、その後すぐに病院行きだろうけど。
これまで2度ハチにさされたことがあるけれど、すぐに毒を抜いたときは痒くもならなかった。
犬は人間より毒にも強いらしい。
でも、わたしは自分になにかあったときはある程度強い(つもりだ)けど、パセ&ポプになにかあると骨抜きになってしまう。
強くならなくちゃぁ。
今晩のごはんの用意をする。
ししたろは妹が一緒だと楽ちんだそうだ(笑。
わたしも楽ちんだ。
ま、キムチ鍋なので、面倒なこともないんだけど(爆。
お座敷シェルは本当にすごしやすい。
夕方、ボール遊びする子どもたちや辺りの様子を眺めるパセ&ポプ。
その姿に心底ホッとする。
食事のあとぐだぐだしていたら頭痛と眠気が襲ってきた。
ポプラの一件が原因なのかはわからない。
早々とルームで横になっておしゃべりをする。
妹もお座敷で横になった。
昨晩と違って今夜は暑い。
フリースブランケットなんていらない。
スノピおふとんの上で寝ているパセ&ポプを起こすのもかわいそうなので、オフトンのファスナーを開き、分割した。なんとなく体にかかっていればそれで十分という温度。
一度寝入っていた妹が起きだす。わたしも頭痛から脱出して、寝た。
妹の寝場所を取ったパセリ。
わたしの寝場所を取ったポプラ。
パセ&ポプはたぶんぐっすりと眠れたと思う。
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