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秋田の湖で紅葉狩りカヌー 11

管理棟に近い駐車場に車を停め、今度は荷物を運ぶ。
管理棟の宿直用の和室を使ってと言われたけれど、フローリングの方にマットとシュラフての方が気が楽ということで、シュラフとマット、ピロー、フリースブランケット、キッチン用具、食材、ランタン、パセ&ポプ用のトイレシーツなどなどを持ち込む。


荷物を運び追えて、今度はパセ&ポプを車から降ろして管理棟へと行こうと、パセ&ポプの様子を見ながらうつむき加減で歩きはじめた時、車に載せてあるカヌーの端っこにおでこをしたたか打ってしまった。おでこはなんともなかったけれど着けていたヘッドライトがばらばらになり吹っ飛んだ。電池があっちへこっちへころころと転がり、ライト部分は分解してしまっていた。ヘッドライトのおかげでわたしのおでこは無傷だったのだろう。
ライトがひとつなくなって、ししたろのヘッドライトを頼りに、電池と部品を探す。
一応電池と部品を回収し、パセ&ポプと管理棟へ。

管理棟の電気はすべて落ちている。自動販売機などがあるので、電気が入っていたらうるさいし明るいしで眠れなかっただろう。しかし、シェル程度ならランタンひとつでも明るいけれど、20畳ほどの管理棟は暗い。管理人さんが電池式のランタンをいくつか点けて置いていってくれたので、かなり助かった。
おそらくレンタル用だと思える銀マットも用意してくれていた。サーマレストを持ち込んだので使わなかったけれど、管理人さんの心遣いに感謝する。

所謂ログハウスで、窓にはカーテンなどない。風が吹くとがたがたと窓が鳴る。
わたしの予想などあてにならないけれど、それでも予想以上の強い風が吹き始めていた。テントサイトより管理棟の方が風当たりが強い場所の気もするけれど…。

18時20分には、管理棟でビールを開けてくつろぐことが出来た。

使っていいよと言われていたのでお台所を借りる。置いていってくれた電池式ランタンとヘッドライトを頼りに、途中まで出来ていたパセ&ポプご飯を完成させた。
次にわたしたちのごはん作りに取り掛かる。といっても、今夜も簡単にキムチ鍋。
管理棟の窓際に置いてあるテーブルで、ぐつぐつ煮ながらお鍋をつつくことにした。
湖も湖を見下ろす山々も真っ暗で、窓にはわたしたちの灯りが映っている。

19時頃には風がおさまってきた。
パセ&ポプにごはんをあげて外に出てトイレタイムにする。パセ&ポプはごはんを食べると必ずトイレに行くので、キャンプのときはいったん外に出ることにしている。家では自分たちで勝手に室内のトイレに行く。
外に出てみると、おさまったかのように見えた風がまだまだ強く、冷えてきていた。

暗闇の中に一台の車のライトが光った。そして、近づいてくる。
悪いことをしているわけじゃないけれどどきどきした。が、杞憂に終わり、ライトは遠ざかっていった。

20時近くなって備え付けのストーブを点けた。管理人さんが寒かったらストーブ点けてと言っていたが、やはり広いし天井も高いし寒い。

はじめての場所だからかポプラは落ち着かなかった。
パセリはマットとシュラフの上でころんと寝ていたが、居場所が定まらないのかポプラは抱っこ~とせがんでくる。
窓ががたがた言っているからかもしれない。
そういえばポプラはコテージやホテルなどに泊まったことがない。パセリは経験していたから余裕だったのだろうか。初めてのときでも余裕だった気はするけど…。
寝る場所は外から見えないところにするつもりだったけれど、食事をする場所からも見えなくなってしまってパセ&ポプの居場所が困ると思い、マットとシュラフは近くに置いておいたのに、ポプラはちょっとした距離でもダメみたい。そういえばシェルのルームでパセ&ポプと寝ていたかと思うと「出せ~っ、抱っこ~っ」をせがむっけ(^_^;)

21時をまわって、パセ&ポプとまた外に出る。
相変わらず風が強い。
なぜか外に出ると車がやってくる。関わるのはいやなのでそそくさと管理棟に戻った。
入ってきた車は管理棟前に停まり、男性が一人降りてきた。管理棟の階段を上がってくる。
わたしたちは管理棟の中に入った場所で、パセ&ポプの足を拭いているところだった。

なぜか大昔間違って観てしまった映画「シャイニング」が頭の中に流れ出した。
恐怖が甦る。内容は覚えていない、というかちゃんと観ていない。でも、怖かったことは覚えている。
シャイニングは舞台がホテルで、雪の中を追いかけられるようなシーンがあったと記憶している。

管理棟は強風の闇の中。知らない人がコツコツと階段を上がって近づいてきた。
管理棟内は和室や台所、トイレ以外は外から丸見えである。そして、玄関は上半分がガラスで下半分が木で出来た引き戸になっている。
パセ&ポプの足を拭くわたしたちはしゃがみこんでいるので、隠れるつもりではないけれど、隠れているように見えたかもしれない(笑)。できるなら関わりたくない気持ちはあったけど…。
入り口のドア一枚隔てたところに男性が立った。
男性がドアをノックした。
風が窓を叩いてがたがたと音を立てる。
ししたろはドアをがらがらと開けた。
強い風が内部に入り込んできた。

ポプラが吠えた。

「すいません。管理人の方ですか?」男性が聞いてきた。
ごく常識的に…。今考えれば、そっちの方が怖い?(笑)

明日の朝早くから山に登るので、ひとつ離れた駐車場にテントを張っていいか知りたかったらしい。
たしか管理人さんは駐車場でP泊やテントを張る人たちに迷惑していると言っていた。管理人さんの言っていた駐車場は管理棟前の駐車場だけのことを言っていたのか、もうひとつ離れたところのことも言っていたのか、わたしたちにはわからない。そして、「良い」も「悪い」も言える立場ではなかった。
駐車場でP泊なりテントを張ればサイト料を払わないですむ、と受付をせずに駐車場を占拠する人たちがいるとは聞いていた。このキャンプ場はたった840円である。
驚くほどきれいに掃除されているトイレや炊事場、管理してくれている方たちへの料金にしたらとても少ない金額のはずなのに、それすら払わずトイレや炊事場をただで使うその人間性に情けない気持ちでいっぱいになる。

その男性はもちろんシャイニングでもなく、わざわざ管理棟に確認にくるくらいだから非常識な人でもないのだろう。男四人なので車の中で寝るにはつらいからテントを張りたいんですけどねぇ、と言っていた。もし管理人さんがいてテントを張るならサイトへと案内すればきっとそちらに張った人だと思う。

ひとつ先の駐車場は管理棟の窓からもよく見えた。その男性の車は駐車場に向かい、駐車場でテントを広げ始めた。風に煽られて四苦八苦している様子だった。
しばらくして、キャンピングカーらしき車も停まったようだった。

10時近くなると、風はますます暴れだしていた。まるで台風のような嵐である。
窓ががたがたと揺れた。湖を囲んでいる木々が大きくうねり、風は唸り始めた。

管理人さんが何度も管理棟へ泊まってと声をかけてくれたことに感謝した。普通だったら断り続けたはずのししたろとわたしの意見が一致して管理棟に来て良かった。シェルを張った場所がこのときどんな状態になっているかはわからない。意外と木々が風をさえぎって風の恐怖なんて感じていなかったかもしれない。でも、管理棟でのこんな恐怖体験は、なかなか出来るものではない(笑)。家にいると雷や台風に心躍らせてわくわくしてしまうことがある。今回の管理棟宿泊体験は最高にわくわくするものだった。

ストーブはついていたけれどやはり寒いので、玉子酒を作り身体の中から温まってから、シュラフにもぐりこんだ。

シュラフにもぐってもなかなか眠れなかった。
風だけではなく雨も降り始めた。
雨が風に遊ばれて窓に打ちつけている。

シェルだったら、風はなかったとしても、あの湿地サイトで水溜りが出来ていたかもしれない。まだ新しい幕体をデビューさせずに古い幕体を使っていたから雨がシェル内にしみて来ていただろう。

頑丈な管理棟でもわたしは一時間ごとに目が覚めた。寝ていると高い天井がより高く感じる。窓はガタガタと時折強く響く。天井トップの高い位置にある窓もがたぴし音をさせている。

こうなるともうわくわくは通り越している(苦笑)。

何度か目を覚ましては、眠り、を繰り返し、4、5回目に起き出すことにした。




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